R.シュトラウス:『ばらの騎士』全曲

2007年のドレスデン歌劇場の来日公演を改めて聴きました。you tubeに上がっていたので、著作権の方がどうなっているのかわからないけど、多分、NHKに権利があるんでしょうが、まあ、手軽に観れたので、楽しませてもらいました。

いい上演ですね、やっぱり。ファビオ・ルイージの指揮がいいのかなあ。ひどく細かいセリフと早いパッセージばかりが目立つのではなくて、曲の印影というか、抑揚が丁寧に表現されていて、素晴らしいですね。

彼がN響の首席になるんですから、もっぱら家で音楽を楽しむ私としては、ワクワクです。
なんとなく冒頭のオクタビアンと元帥夫人の濡れ場、2幕の銀の薔薇をエンゲージリング代わりに花嫁に渡す華やかなセレモニー(これは作者の創作ですが)の後のオクタビアンとゾフィーの二重唱、3幕最後の三重唱以外は流れみたいに見てしましますが、この上演は違います。

このオペラのテーマは「時の移ろい」、「世代の交代」。古いものの悲哀と新しいものの希望、と同時に、古いものの受け渡すことの希望と新しいものの古いものへの憧憬、そんなメロドラマに現実世界のエネルギーと粗野さが介入して大騒ぎになる喜劇。有名な見所は多々ありますが、千変万化するセリフのやり取りにこそこのオペラの内面が隠されていると思います。
1幕の新旧の睦まじさを表す元帥夫人とオックスとのやり取りの面白さ、そこに屋敷の下働きの連中が入っての喧騒のそれぞれのシチュエーションのメリハリ、2幕の新旧の入れ替わりのきっかけとなる現実世界のオックスの化けの皮剥がし、3幕のオックス追い落としのドタバタ、オペラの全体像をルイージにきめ細やかに説明してもらっているようで、楽しいですね。
この演奏、最高じゃないでしょうか。上演に立ち会った人には嫉妬します。
また、森麻季さんの1番いい時のゾフィーは、キャラクターが日本人女性向きに書かれているんじゃないかと思いたくなるくらい、可愛い。相手役のオクタビアンのアンケ・ヴォンドゥングは本当に彼女に恋しちゃったのかな、と思いたくなるほどですね。
そのほかの演者も皆達者で、これだけのレベルの演奏が日常的にできるドレスデン歌劇場には感心させられます。
1986年だったと思いますが、ゼンパー・オーパー(ドレスデン歌劇場)が修復なって再開したニュースが当時の西ドイツでも報道されて、その時の演目が「ばらの騎士」だったことを思い出します。観たかったですから。

アンネ・シュヴァネヴィルムス(S 元帥夫人)/アンケ・フォンドゥング(Ms オクタヴィアン)/クルト・リドル(Bs オックス男爵)/ハンス=ヨアヒム・ケテルセン(Br ファーニナル)/森麻季(S ゾフィー)/ザビーネ・ブロム(S マリアンネ)
オリヴァー・リンゲルハーン(T ヴァルツァッキ)/エリーザベト・ヴィルケ(Ms アンニーナ)
ロベルト・サッカ(T イタリア人歌手)、他
ドレスデン国立歌劇場管弦楽団&合唱団/ファビオ・ルイージ(指揮)/ウヴェ=エリック・ラウフェンベルク(演出)/クリストフ・シュビガー(舞台美術)/ジェシカ・カルゲ(衣裳)2007年11月23、25日/NHKホール(ライヴ)