テンシュテットのマーラー8番、です

1991年1月27日の演奏。

ロンドン・フィルだから、テンシュテットとは名コンビですね。

独唱はハンス・ゾーティンほか8人、合掌はロンドン・フィル合唱団ほか。

なにせ、千人で演奏しなければならないんですから、全部書きあげるのはご勘弁ください。

楽譜の指示通りに演奏者を揃えると、800人少々となって、千人には及びません。

初演の興行主が「千人の交響曲」と名付けたそうですが、マーラーはあまり気に入ってはいなかったらしい。

そのマーラーが指揮したミュンヘンでの初演は演奏者が千人を超えてたそう。

おいおい

一年くらいの練習の後の初演は当時のヨーロッパの一大事件だったようで、初演に立ち会った有名人は、シェーンベルクヴェーベルンリヒャルト・シュトラウス、レーガーなどの作曲家、ブルーノ・ワルタークレンペラーなどの指揮者、ヴォーン・ウィリアムズラフマニノフ、レオポルド・ストコフスキーなどの外国人、珍しいところでは、自動車のヘンリー・フォードまでもご来場‼︎

なるほど、錚々たるメンバーですね。

さて、テンシュテットの演奏ですが、どちらかというと、コンサート・タイプの演奏でしたね。

コンサート・タイプ、オペラ・タイプ、何がどう違うのか、なんですが。

オペラ・タイプは歌中心、コンサート・タイプは楽器中心、となるわけで、これは小沢征爾さんのお話の私流のアレンジ。

歌は音を探し出さないといけないでしょう。弦楽器もそうですよ。

ところが、ピアノは鍵盤を叩けば音階が出てくる。オクターブがきっちり24の平均律に分かれている。

ところが歌はどっちつかずの音がどうしても出てきてしまう。

それを良しとするか、出来るだけ避けようとするか、でオペラ・タイプとコンサート・タイプに分ける。

もちろんどちらかにきっちり分けられるなんてことはないわけで、多分にファジーですから、念のため。

テンシュテットも結構微妙です。

ああ、言い忘れましたが、素晴らしい演奏ですから、あらかじめ言っておきます。

6番のときも言いましたが、演奏者の自発的な演奏姿勢を押さえつけることなくコントロールしている点はこの8番でも変わりはない。

8番は独唱、合唱はあるものの、やはり交響曲と言うべきもののように思う。

が、歌が交響曲の構成の中核を成しているとも、同時に思う。

素人の戯れ言を聞いていただくと、神出鬼没する無数のモチーフが絡み合い、もつれ合いながらクライマックスに向かうのが魅力のマーラーが8番ではそんなでもない。

それは歌の内容がいつものモチーフの代わりをしているから。歌の内容が曲想に変化を加え高まり、ついに終結に迎える。モチーフの代わりとはそんな意味。

テンシュテットはそういう意味で交響曲としての全体像に肩を持つ演奏なのだ。演奏後も、独唱者に拍手を送るのもほどほどに、拍手の向く先にはテンシュテットがいた。